テロリズム、されどテロ。だけど、、、
無垢の人間に対するどんなに残酷な仕打ちであっても、政府軍や国家等の疑似的正当性を担保された組織によるものであると途端に美化されてしまう。卑劣極まりない残虐行為とはいえ国家間の戦争行為による愛国心等のお墨付きが与えられると英雄視されがちだ。
しかしそれが小集団や個人などの非組織的暴力行為となると、どんなに正義の錦の御旗を抱えていようと私怨による犯罪行為ないしテロリズムとして断罪される。その違いをここで論じるスペースはないが、残虐行為において少なくとも両者に明確な違いはない。古くはなるが例えばトロツキーやケネディの暗殺の背後に冷戦時代の敵対する相手国の存在があったとしても不思議ではないだろう。単なる個人的な恨みや怨恨によるテロとはいえない。加害者はテロリストとして断罪される前に葬り去られ、国家の背後にいる黒幕との因果関係も不問に付され、史実から消え去った。その後の米ソ両国の歩んだ道を見れば、彼らの存在が如何に邪魔であったかが分かる。
さて今回の安部元総理暗殺事件も単に山上容疑者による単独犯行なのかどうか、今の段階では不明であるが、現在の自民党旧安部派が結果的に政治的な窮地に陥っている状況を鑑みると、個人的怨恨によるテロの範囲を既に超えてしまっている。少なくとも岸田内閣の支持率急落で得をする日本の友好国ないし周辺国がいてもおかしくない。今の段階でどの国とはいえないし陰謀論に与するのは好きではないが、現実を冷静に俯瞰するべきと思う。少なくとも以下の事実が浮き彫りになったことの事実は大きい。
自民党を中心にした保守系議員たちが長年、愛国を装って近隣国との対立姿勢を演じることで政権を維持し、時には北朝鮮の核実験やミサイル発射の度に国内の求心力を高め、自党への支持率向上を図ってきたこと。にもかかわらず実はその裏で統一教会からの献金や組織的支援を受け、あるいは資金提供して当該団体への便宜を図り続けてきたこと。 岸信介元総理から3世代にわたって受け継がれてきた統一教会と岸、安倍家の密接な関係は異常であり、教団へ礼賛のビデオメッセージを送っていた安倍氏が現職の総理、総裁の時にも組織票を割り振っていたことなどが明らかになった。
自民党とカルト教会との接点を炙り出した今回のテロリズムの影響力は大きい。ただテロはテロであるので断罪しなければならない。暴力に安易に頼ってしまう自己顕示欲的表現手段は民主的とはいえないし、同様のテロの連鎖を招きかねない。だが加害者である山上容疑者も教団の暴力的搾取からの被害者ないし犠牲者であったことは事実である。いわば暴力的なカルト宗教による日常的なテロ行為によって被害者が加害者に変わってしまう連鎖と見ることも出来る。同じ穴のムジナともいえようか。山上容疑者は凶暴なカルト教団がもたらしたテロリズムの体現者に変貌してしまったのかも知れない。
さて善良な日本国民が長期間、世代を越えて搾取され、今も困窮を強いられいる2世信者やその親族たちが酷い犠牲に遭っているにもかかわらず、彼らへの救済策や、再発防止策として、合法的に解散命令や損害賠償命令を出せるようにする法整備も国会で検討の動きもない。 最近立ち上げた連絡会議も肝心の解散命令の請求を担う文化庁宗務課が含まれておらず、岸田内閣が本気で取り組むつもりのないのだろうか。