ロシア人がロシア嫌い?
ウクライナ侵攻中のロシアで、国民が国外に出る動きが急増しているらしい。独立系メディアが6日、連邦保安局(FSB)の統計として、今年1~3月に約388万人が国外に出たと伝えた。渡航先は旧ソ連の構成国が多く、前年同期の5倍近くにふくれた国もある。「プーチン政権に賛同できない」「制裁で国外とビジネスができない」「生活が苦しくなる」が主な理由で、そもそもロシアが嫌いになって若者を中心に国外脱出が増えているとのこと。渡航先別では、旧ソ連のグルジア(ジョージア)が3万8281人と前年同期比で4・5倍。カザフスタンは20万4947人と同1・6倍だ。
ロシアの若者にとっては、仮にアメリカやNATOが攻めてきたら、祖国防衛のために立ち上がることなどぜず、むしろ西側からの侵攻を大歓迎するのではなかろうか。プーチン政権が倒れ、バイデン政権が送りこんだ傀儡政権が樹立された暁には諸手を挙げてアメリカナイズされることに狂喜乱舞するに違いない。現政権より余程民主主義を謳歌でき、経済や教育面での自由が保障され、復古的なネオユーラシア主義から訣別出来るからだ。
しかし残念なことにそれをアメリカが望んでいるかといえば甚だ疑問である。無用な東西対立が解消されてしまうと巨大な仮想敵国の1つが消えてしまって後は中国だけとなり、軍事関連物資の売り込み先の縮小に直面するからだ。ウクライナ戦争で絶好調だった軍産複合体の一角が崩れてしまうことは決して歓迎するまい。戦火の中で民間人が逃げまどい、多くの人が非業の死を遂げようと、兵器市場の縮小に伴って軍需産業の株価が下がってしまうような停戦や和平などこれっぽちも望んでいないという冷徹な彼らの計算があるのだ。
世界各地で攻めたり攻められたりの紛争地域が定期的に現れ、攻撃された民家や車の中で無残に焼け死ぬような犠牲者がどんなに溢れようが、古くなった軍事兵器の償却と最先端兵器同士のせめぎあいが繰り返されていくという構図は変わらないだろう。近年では1965年から約10年間にわたるベトナムにおける米ソの代理戦争や1980年前後の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻、2003年からのアメリカを主体にした多国籍軍によるイラク戦争などほとんど理由なき戦争行為の背景には各種兵器の新陳代謝と兵站の維持、軍隊の実践訓練などがある。そして犠牲になるのはいつも市井の民であり、アメリカもロシアも中国もイギリスも戦争特需の利権で潤うのは政権の幹部連中である。将棋の駒のように軍隊を動かしている彼らの行動原理と利害は驚くほど共通点がある。どの国民もそんな連中に搾取されて犠牲にならないよう変幻自在に生き抜いていきたいものだ。