身近な家族や親友、地縁の恩人などが危険に晒された時に身を挺して彼らの生存を守ろうとするのは自然なことであり、目に見えない幻想としての「愛国心」を押し付けられた末の行動とは違う。愛国心を弄ぶなと言いたい。だが古今東西、国のトップが自分の権力的地位を守るための方便、或いは他国を侵略する際の口実として「愛国心」が如何に多用されてきたか、もうこの言葉自体の本来の意味は喪失してしまったといえる。そもそも愛国心は強要されるものではないだろう。自然に湧き上がるものである。にもかかわらず、権力者が自らの権力基盤を固め、悪事を隠蔽する際の目くらましとして愛国心が語られ、使われてきた罪は大きい。
今回のウクライナ戦争ではロシアのプーチンもウクライナのゼレンスキーも両国民に愛国心を強調し、「国を守れ」と合唱している。自分や愛する人の生存、国土防衛などと「国を守る」ことが同一線上にあるのかないのか今一度疑った方がいい。
その際の「国」が国民全体のものなのか、一部の国民又は権力者のものなのかという根本的な問題提起が必要である。自分の家族や郷土を守るための戦いに命を差し出したはずが権力者の蓄財や利権の確保、立場を守るための戦いに動員されただけであるとしたら、全く犬死にとしか言いようがない。そんな悲劇を避けるためにも国同士の戦争が始まりそうになった時には、双方の国民同士が戦う前に手を結んでしまうような交流や連帯、情報チャンネルを作ってしまうことが必要だ。侵略する自国又は他国の権力者に逆らってでも双方の国民同士が繋がってしまうことで政権幹部のメンツや利権のために無駄死してしまうことが避けられるのではないか。昔も今も概ね戦争には裏の利権や領土保などを隠すための愛国心やレトリック、情報操作、偽旗作戦などがつきものである。
だからプーチンの唱える愛国心の偽善性はさすがに問題外としても、ゼレンスキーのいう愛国心にも疑義が生じてしまう。ゼレンスキーは大統領就任後の2年間で8億5000万ドルもの蓄財をなし、ロシアの軍事侵攻が始まって以来、大統領の資産は毎月1億ドルのペースで膨れ上がっていると「パンドラペーパーズ」によって暴露された。オランダの「民主主義フォーラム」が収入の根拠を求めて情報公開請求を行っても未だに大統領からの回答はないという。どういうことだ?彼は元俳優でコメディアンなだけにジェスチャーを交えてのアジテーションやプレゼンテーション能力は上手いという他ない。まさか西側のシナリオ通りの演技ではないと信じたいが、上記のような蓄財が短期間の間にどうやってなされたのか答えるべきだろう。さらに彼が立ち上げたテレビ番組制作会社は英国領バージン諸島に設立した幽霊会社を通じて資産運用を繰り返していることが発覚している。オランダの「組織犯罪汚職報告書」によって問題が明らかになってきた矢先のロシア軍侵攻騒ぎであっただけにうさん臭さが消えかけてしまった。